大判例

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東京地方裁判所 昭和26年(ワ)2527号 判決

原告 成瀬証券株式会社

被告 塚本伊三郎

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は「東京簡易裁判所が、同庁昭和二十五年(ヘ)第四四五号公示催告事件につき、昭和二十六年一月十六日なした別紙目録記載の株券の無効を宣言する旨の除権判決を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」旨の判決を求める旨申立て、其の請求原因として、

「被告は昭和二十五年四月二十一日東京簡易裁判所に対し、別紙目録記載の株券を昭和二十四年十二月十七日盗取せられたとして公示催告の申立をなし、昭和二十六年一月十六日、同裁判所昭和二十五年(ヘ)第四四五号事件として、右株券の無効を宣言する旨の除権判決を得た。

しかしながら、被告は右株券を既に昭和二十四年十一月中に被告の白紙委任状を添付して訴外大家槇男に任意交付して居り真実右株券を盗取せられたこともなく、又右株券は紛失又は滅失したものでもない。のみならず被告は右株券を原告が占有中なることを知り、原告に対し右株券返還の訴を提起し、現にその訴訟が東京地方裁判所昭和二十五年(ワ)第一六六一号事件として繋属中なるにも拘らず、右申立を為したものである。

従つて、右除権判決の前提たる公示催告手続は、法律に於て許す場合でないのに為されたものであるから、民事訴訟法第七百七十四条第二項第一号に基き、右除権判決の取消を求める。」と述べた。

被告訴訟代理人は主文第一項同旨の判決を求め、「原告の主張事実は総て之を認める。」と述べた。

三、理  由

原告の主張する事実は総て被告の認めるところである。しかしながら、民事訴訟法第七百七十四条第二項第一号に所謂「法律ニ於テ公示催告手続ヲ許ス場合ニ非サルトキ」と謂うのは現にとられた公示催告手続について抽象的一般的にこれを認める法律上の根拠を全然欠く場合を意味するのであつて、苟くも抽象的一般的に公示催告手続を許す旨の法律の規定のある限り具体的個別的の公示催告手続内でなされた事実認定が不当である場合の如きはこれに包含されないものと解すべきところ、本件に於て原告の主張するところは、被告が除権判決の申立をした当時、本件株券の所持人ではなく、右株券を盗取せられ又は紛失若しくは滅失したものでもなく、且つ、原告が現にこれを占有中なることを知つていたものであるというのであつて、法律上右株券については一般的に除権判決をなすことを得ないというのではない。畢竟右は、具体的な公示催告手続内でなされた事実認定が不当であつたことを主張するに止まるから、適法な除権判決取消の理由とはならない。而して法律はかような記名式株券について公示催告の申立をすることを許しているのであるから、原告の主張するところによつては、本件除権判決が民事訴訟法第七百七十四条第二項第一号に違背してなされたものであるということはできない。原告は他に右除権判決取消の理由を何等主張立証していないから、本件除権判決はこれを取り消すべきでない。

よつて原告の本訴請求は、主張自体失当としてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担に付き民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 小川善吉 荻原直三 村上悦雄)

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